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生徒玄関に着くとそこには定番のごとく、着飾った、女子生徒の壁ができている



この時間は女子生徒のかわいい声、んー…叫び声?の方が合ってるかも、が辺りに響き渡る



男子生徒は呆れたように、迷惑そうにそちらを見ている



人間の壁を押し退けながら前に進んでいくと、甘ったるい声が耳に届いた


「おはよう!みんな今日もかわいいねぇ」

「如月先輩だぁ!」
「ああっ!同じ空気吸えたああ!」


女子の壁の中心にいる人物

三年の如月裕先輩、濃いめのサラサラな茶色い髪に、少しタレ目、緩く着こなした制服に、背もスラッと伸びて優しい雰囲気、確かにかっこいいけど…

「ののちゃん、髪型変えた?あ、ももちゃんは、香水変えたの?いい香りするね」

「うん!そうなのお、どうかなあ?」

「さすが裕くん!」

声を掛けられた子達は顔を赤らめて嬉しそうにしている


一人、一人にチャラチャラした言葉を掛けていく如月先輩

つまりは、誰にでも王子様キャラを振り撒いているわけです


如月ファンは今日も生きててくれてありがとうレベルで拝んでるけど、

……私はちょっと苦手なんだよなぁ



やっぱり、特別がいい



自分にとって特別な人のたった一人になれたなら、どれだけ幸せだろう

毎日、夢を見ずにはいられない


如月ファンを掻き分けていたら、如月先輩が隣に並んでいた彼の肩を抱く所が目に入った

「湊も、少しくらい笑いかけてやれば?」

「無理」

「じゃあ、みんな俺がもらっちゃうよ?」

「勝手にしなよ」

ニコニコ顔で如月先輩は、隣に並ぶ、見るからに無気力な彼に声をかけた

もう人懐っこさが全面に現れてるんだよなぁ、この人は…

そんな犬系王子、如月先輩のことを自然に、やや、冷たく流してしまう、私の片想いの相手


それが…

「九条せんぱーい!!」
「こっちみてください!」


九条湊先輩

サラサラのまっすぐな黒髪は少し目にかかり、形の整っている男の人にしては大きく綺麗な目には長い睫毛

身長も高くてスラリとしている
肌はほどよく色白で陶器の様、まさにこの学校一の美男子

如月先輩もかっこいいけど、清楚な感じが九条先輩の方が人気の理由

そんな、学校の王子様なんて呼ばれている先輩

そんな九条先輩には問題が…



「ねぇ、うるさいから猿はあっち行ってくんない?」


「「「………………………」」」


女子が嫌い



以上なくらいに

普段眠そうにうっすら開いている目をさらに細めて、女子生徒に恐ろしい冷たい視線を浴びせる