だけど、先輩は一度もこちらを見ずに窓の外を眺めている

「湊先輩」

「なに」

「英語の先生、厳しい人ですよね、いいんですかこんなところにいて…」

そう、だから先輩はいつもならここにいないはずなんだけど…

「…羽華」

「はい?」

「………なかった」

「え?」

珍しくぼそぼそ喋る先輩
よく聞こえないなあ



隣に座って先輩の声に耳を傾ける


「今日、屋上にいなかった」

「………あ」


無表情な顔がこちらを見ている
でも、どこか機嫌が悪そうに見える


「私が屋上にいないの気づいてたんですか?」

「…うるさい視線、感じなかったから」

「ふふっ」

「チッ」

ふいっと顔を逸らして舌打ちされたけど、私がいないことに気づいてくれてたなんて、嬉しすぎるよ

あれ

もしかして、心配してここで待っててくれたのかな?