何度でも君に好きが届くその瞬間まで

モグモグとサンドイッチを頬張る洸君
上目遣いでこちらを見ながら返事をする

可愛い…

確かに今は背も伸びて、顔もすっかり男の子の顔で、ちっとも昔の姿とは重ならない

重ならないんだけど…

「今、可愛いって思っただろ」

「へぇっ!?」

「羽華の考えてることなんて、分かるし」

むっとしながら、私の鼻を摘まむ

「ごめんなひゃい」

「じゃあ、また、こっちゃんって呼んでみて?」

「こっちゃーん」

「長谷川は静かにしてね?」

「はーい」


さっきから菜留は、面白そうにこちらをニヤニヤしながら眺めている


菜留め、完全に楽しんでるんだあ!私が洸君に怒られてるところを見て!

キッと、睨んだけど手でハートの形を作ってこちらに投げてきた


それはほっといて、

今さら、こっちゃんは、ちょっと…
あの時は女の子だと思ってたしなあ

「羽華?はーやーく」

左手で頬杖を付きながら反対の手で私のほっぺたをつついてくる

洸君の顔、意地悪する時の顔だ!

菜留!助けてっ
菜留の方を見ると、


ティロンッ

「あ!雅樹からだー、行ってくるねん」

雅樹は、菜留の他校の彼氏さん
もうずっと付き合ってる、仲良しカップル
たまにこうしてお昼に電話している

逃げた、逃げたよね、菜留!!

菜留が出ていったドアを睨み付ける


「ねえ、羽華、寂しかった?」

はっ、忘れてた洸君の事

ツンツンは、終わってて、こっちゃん呼びも、もういいみたい

私の髪を触りながら、こちらの様子を伺う様に綺麗な茶色の瞳が揺らぎ見つめてくる

寂しかった?

いつも、一緒に遊んでくれてた洸君
ヒロがお兄ちゃんなら、洸君は妹みたいに思ってた

あ、弟だね

いきなりいなくなってしまった
洸君がいなくなった日からあの公園には行かなくなってしまった

思い出しちゃって、悲しくなるから


本当に、


「寂しかったよ…」

つい、下を向いてしまう

ヒロもいてくれたし、孤独になることはなかった。だけど、洸君も同じくらい大切だったら 


ガバッ


「ひゃあっ!?」

「だよね!寂しかったよねっ」

隣に座ってたのに、勢いよく抱きつかれて椅子から落ちそうになる

うんうん、って言いながら頭を何度も撫でてくる

洸君も、寂しかったのかな?


私の髪に触れている洸君の手にそっと触れる

「もう、急にいなくならないでね?」

洸君の目を見て伝える

ピシッと洸君の顔が固まるのが分かる
顔というか雰囲気が…

「洸君…?」

顔を覗き込むと、勢いよく反対に顔を背けられる、何だか耳が赤く見える

「はあ、……羽華」

しばらくしてからこちらに向き直ってくれる
その顔は真剣になっていて、思わずビクッと反応してしまう