♡♡♡

「樹先輩?いますか?」

「羽華?こっちー」


奥の方から声が聞こえて近寄る

いろんな画材が置いてあって、何だか込み合っている、ぶつからないよう、ゆっくり進む

「先輩?うひゃあっ」

「うおっ、大丈夫か?」

角を曲がったら先輩がいて、ぶつかってしまう
転びそうになって、先輩に支えてもらう

「ありがとうございます、」

「いつもだろ」

くくっと、口元に手を寄せて、笑っている

優しい先輩

なのに私はこれから、傷つけてしまう



「先輩」


「んー?」


掃除をしながら、こちらに視線を送ってくれる



「……ごめんなさい」


「………」


何も言わない、先輩
でも、きっと、伝わってる

いつも、私を見ててくれた樹先輩だから



「うん、そっか」

「ごめん、なさいっ」

「あー、……別に返事とかいらなかったんだよ?」

困ったように笑って、頭を撫でてくれる
こんなときでも、大切にしてくれるのが、痛いくらい伝わってくる

「だけど、このままは、先輩に対して最低だなって、思って」

「羽華は優しいね」

目を細めて首を少し傾けて微笑む

「分かってたけど、九条の事しか頭にないっていうのはさ、だけど伝えなかったら後悔してたし、それに、さ、前より羽華と話すようになったしね?」


ぐしゃぐしゃと、髪をボサボサにされる

「!?」

「これからは、一番の相談相手、になっていい?」

どこまでも、優しいね

「本当のお兄ちゃんより優しいです、先輩」

「え、羽華、兄ちゃんいたの?」

「言ってませんでしたっけ!それが、すごいシスコンで!」

「自分で言う?まあ、そりゃこんなかわいい妹だったらね」

目をあわせて笑う


ありがとうございます、樹先輩
どうか、素敵な恋をしてください


その時は、私が一番に側にいるから