「羽華?お疲れ様ー、足、熱は?」

早口で喋りながら、私の側に駆け寄ってきてくれる菜留

大丈夫…
言ったつもりだったけど、声は出なくて

瞬間、地面が沈んだのかと思った


「羽華!!」


菜留の焦った声


一瞬見えた空



後ろから誰かが支えてくれたとき、大好きな先輩の声が聞こえた気がした


ねえ、どうしてですか?




クラクラする意識のなか、うっすら目を開ける

珍しく険しい表情を浮かべてこちらを見つめているのは、湊先輩


どうして、そんな顔するの

先輩の好きな人は別にいるのに
一番に駆けつけてくれるのは先輩なんだね

告白の返事はきちんとくれないのに

あれ、そっか
くれてるじゃん、先輩は

私が勝手に告白してただけだったや

うー、熱で何がなにやら

ん、じゃあ、私が告白やめればいいだけの話なのかな?

そうだよね、そうだ

揺れる意識の中

久しぶりにこんなに考えたな、色々
熱が出るのも悪いことじゃないかも


背中に柔らかい感覚がして、うっすら目を開ける

「あ、起きた?」

「…先輩?」

「脱走してリレー出るとか、なに、反抗期?」

言葉は棘があるのに、優しい顔をして私の頭をそっと、撫でてくれる

白い天井、保健室?
ベットまで運んでくれたんだ

ただいま、ベット、無事帰還したよ

保健室は静かで、他には誰もいないみたい

ベットのとなりに座って窓の外を見ている先輩を盗み見る

熱のせいなのかな?
横顔を見るだけで泣きたくなる
情緒おかしくなるよ、熱出ると