すー、と何事もなかったように視線をずらして
樹先輩達の会話に戻る

樹先輩には、やっぱりなんだか悪いから、別の美術部の先輩に頼もうかな…

誰かに声を掛けようとしていたら、


「羽華、行こう?」

気づけば、お題を握っているのとは、反対の手が樹先輩に握られていた


「え、先輩?」

「ほら、早くしないと他の人が先にゴールしちゃうよ?」

周りを見れば、こんなに、わちゃわちゃしてたのに、まだ、誰もゴールしていないみたい

だけど、他の子達もお題をクリアしようと走り回っている、ゴールするのも時間の問題かも


「で、でも」

「俺には、気遣うなって言ったろ?」

そう言って、優しく笑ってくれる

先輩がいいなら、断る必要はないよね…?
ないのか!?

うーん、でも、湊先輩もきっと月野先輩とゴールするだろうから、頼めないし…

他の美術部の先輩達は、ニヤニヤしながらこっち見てるから、きっと助けてくれないだろうし

悩んでいる間に樹先輩が手を引いてくれて、連れられて走り出した

つもりだった