先輩が覚えている私との最初の記憶はそれなんだな

やっぱり、中学の時のことなんて覚えてなかったなあ


でも、いいんだ

また会えたからね



なぜか私を見つめたまま黙ってしまう先輩

「……覚えてる」
「先輩?」

何て?

どうしたんだろう?

「湊先輩、っひゃあ!」

「行くよ」

いきなり、持ち上げられて正面から先輩に抱きつく形になる

お姫様だっこもどきみたくなってる

実際は担がれてる、の方が正しいかも…

「グラウンドですか?それなら、自分で行けますよ!」

「は?バカなの、保健室」

保健室?


だ、だめだめ!


「降ろしてくださいっ」

「落とすよ」


それは、困るけどっ、だってきっともうすぐ…

《続いての競技は、借り物競争です、出場する生徒は、本部の横まで集まってください》

タイミングよく、放送がなる

「先輩!私今の放送のに出なきゃいけないんです!」

「代わって貰いなよ」

そうなんだけど…

もともと、人数が集まらないなか、決めたから
やりたい人なんていないと思うから…
それに私のせいで誰かが嫌な思いするのは嫌だ


「…先輩、ごめんなさい」

「…っ!!」


先輩の腕のなかで暴れてみたけど、ちっとも動かなかったから、

近くにあった、先輩の耳を噛んでみた

いつも、私のことからかってくるけど、先輩だって耳弱いじゃないですか!


ビックリしている先輩を置いて、グラウンドまで走り始めた



「羽華!!」


振り向けば、珍しく、顔が赤くなった先輩が耳元を抑えながら後ろから叫んでいた

心配してくれてるんだろうけど、どうしても出なくちゃいけない

皆に迷惑はかけられないから

「先輩、応援お願いしまーす!」


そこからは、振り返らなかった

というか、先輩の後ろから感じる圧がすごくて振り返れなかった