暖かい太陽みたいな髪


そんな風に嬉しい言葉を掛けて貰ったのは久しぶりの事で、先輩がいなくなった教室で少し泣いてしまった


今まで気にしたこともなかったけれど、美形の先輩はその時から学校の有名人だったようで、知らない人はいなかった


その後もなんとなく、気になって先輩を校内で見かけたら、目で追うようになった


無表情も今ほどではなくて、笑った顔、無口だけど優しいところ、いろんな先輩を見ていたらいつの間にか、また、喋れたらいいな、なんて思っていた

とはいっても、教室も離れているし、いつも周りに人がいた先輩だから、視線だって、合わない


印象的だったはずの髪の色、そのままにしたら気づいてくれるかななんて、そんな風に思って、その日からスプレーで染めるのは止めた

また、一人になる

その予想は勿論、裏切らなくて、クラスのいつも一緒にいた人や周りからは、あの娘だったんだ、って目で見られるようになった


でも、この中に一人でもこの髪を綺麗だと言ってくれる人がいたんだと思うと、心が温かくなって、前みたいな寂しい気持ちにはならなかった

それに嘘をついたまま友達をつくっても、相手も自分もいい思いはしないってことがわかったから、これでよかった


それからは、今でも地毛で学校に行くようになった


前よりも周りが明るく見えてきた頃


先輩はその後すぐに卒業


喋ることはなくても、姿を見かけるだけでも良かった

なのに、それもなくなってしまった

ポッカリ穴が開いたみたいに悲しくなった



好きになってたんだなあって、今さら気づいて
先輩のいなくなった中学最後の年を迎えた



『え!モデルさん!?』


新しいクラスの初日

隣の席に座った菜留は私を見て目を見開いて聞いてきた

地毛なんだ、と告白した後も変わらずニコニコと話しかけてくれた

先輩だけじゃなかったんだ、受け入れてくれたのは


地毛の私と仲良くなってくれた菜留
菜留と会えたのも先輩のお陰だと思う

最後の年はとてもキラキラしていた





そして、高校の入学式


家から近いことを理由に選んだ高校

入学からしばらくたったある時

その姿を廊下で見た時、しばらく静かに後を追ってしまった


一緒にいた如月先輩が九条先輩の事を呼ぶのを聞いて、本物だってその日のうちに勢いで告白した


会いたかった、九条先輩


今度こそ、伝えようって



そのときには、なぜかもう、先輩は女嫌いになっていて、私の告白をこっぴどく、それはもう辛辣に断った



それでも


大切な初恋を終わらせたくないから

何度だって伝えるよ




「羽華ー?どしたー、ぼうっとして?」

「先輩と会った日のこと思い出してたの」

「またー?」

「てことで、合コンには、行かないよ?」

「はいはい」

呆れたように、それでも優しく微笑んで菜留は頭を撫でてくれた

先輩何してるかな?


誰よりも優しい先輩のことをいつも想っています

(あ、さっき、美術室で消した写真、復元しなきゃ)


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「!!」

「ん?どうしたー、湊?」

「や、なんか寒気した」

「女の子に呪われたんじゃね?」

「……笑えないから」

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