「羽華、まだ完成しないの?」

隣にならんだのは、樹先輩

じーっと私の絵を見ている


「これで完成じゃ駄目なの?」

「何かまだ、足りない気がして」


そっかー、と言いながら隣に座る


「先輩は、コンクールの絵完成しましたか?」

「したよ、夏休み前には」

早い…

しかも、先輩はコンクールの常連で、沢山の賞を取っている

コンクールは、来年の春となかなか微妙な時期に行われる
文化部は、卒業まで残ってても、基本いいから、最後のコンクールまで作品を描く人が多い



「うーん、今日はもう帰ります…」

「ははっ、昨日もそう言ってたよね」



きっと描けるよ


最後に先輩は、そう言ってくれた


描けそうだったんだけどなあ

夕陽に照らされた廊下

本校舎からは影になって、旧校舎の美術室が見える


先輩まだいるかな


無意識に足は目的の場所へと向かっていた