「………湊先輩」

枯れた喉から出た声は自分でも驚くほど情けなかった

ピタッと、今まで撫でてくれていた手が止まる


その代わり、抱きしめる力が強くなる


固まったまま動かない


せっかく頑張ったのに反応ないのかな?


あ、少しの勇気のついでに言いたいことも言っちゃおう


「湊先輩、月野先輩がいるのに他の子に抱きつくのはよくないと思いますよ?」


こういうことは、早めに言った方がお互いのためになるよね?



それでも、何も言わず固まったまま

パシパシと背中を叩きながら呼び掛ける


「先輩、聞いてます?」




ぐっと力を込めて、先輩の胸を押して離れようとするけど、


「……何で春が出てくるのかは分かんないけど……あ、そっか」


夏祭りのせいか



最後に呟いた一言は私には聞こえない



「ごめん、………だけど、離れないで」


また、引き寄せられて、もとの形に戻る



「何でですか!」



うーっともがいていた私には聞こえなかった声


「…今、すげー顔赤いから」


しばらくして、離してけれたとき

真っ赤になった私の顔を見た先輩は、満足そうにして、隣で眠ってしまった