「依然として無駄が多い。そう思っているのは事実です。しかし、それは必要以上に絢爛さを求める風潮に対してです。過ぎた装飾は、ともすれば下品になりますから」

「しかし、華やかさが損なわれれば陛下のご威光が損なわれてしまうやも……」

「権威は、金銀財宝に宿るとお思いですか?」

 わずかに首を傾げて、エリアスがギルベールを見る。純粋に問いかける声に、いつもの冷たさはない。

 だからだろうか。ギルベールは悔しそうに顔をしかめたあと、渋々答えた。

「いえ。我ながら、子供じみた懸念でした」

 そのとき、事件が起きた。まるで雪解けのように、エリアスが小さく笑ったのだ。

 ギルベールは幻でも見たように何度も瞬きをし、男は天変地異の瞬間を目撃してしまったかのように目をまん丸に見開いた。そのように硬直するふたりに、エリアスは細い指で二か所、書類を叩く。