拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着愛が重すぎます!~


 とはいえ、言われて初めて、目の前に置かれたポークソテーの存在を思い出す。若干ばつの悪い思いをしつつ、手に握ったままになっていたフォークを敢えて置き、ぐいとエリアスに体を向けた。

「あんたこそ、はっきり言ったらどうだよ。よかったな、フィアナは気づいてないみたいだけど。……そんな、あからさまに『お前は邪魔だ』なんて笑顔を見せてるくせにさ」

「おや、驚きましたね。職業柄、感情を隠すのには慣れているはずですが」

 微笑みをたたえたまま、否定することなくエリアスはそのようなことをのたまう。――もっとも、フィアナが目の前にいたときとは異なり、その笑みは上辺だけのものだとはっきりとわかるようになっていた。

(フィアナの奴……いいお客とか言っていたけど、とんだ腹黒男じゃねえか)

 呑気な幼馴染に飽きれつつ、マルスははあと息を吐いた。

「あのさ、あんたが俺を牽制する理由はわかるけどさ、俺が聞きたいのはひとつだけだよ。……あんた、どういうつもりでフィアナに近づいてんだ」

 マルスとエリアス、ふたりの男の視線が交差する。

 だが、数秒後、エリアスはきゅるんと首を傾げた。