その日以来、エリアスの店通いはぱったりと途絶えた。

 何か前触れはあっただろうか。思い返してみたが、考えれば考えるほどそれらしきものは見つからない。いつものようによく食べ、いつものようにマイペースで、いつものようにちょっぴり気持ち悪い。最後の夜も、彼はそんな調子だった。

 いなくなってみれば、元の日常に戻るのはあっという間だった。はじめは気にしていた常連たちも、そのうちエリアスの名を出さなくなった。エリアス狙いと思われたご婦人方も、いつの間にか店に姿を見せなくなった。

 フィアナは変わらず、来てくれる客人たちの間を元気に駆け巡り、時折なじみの客の前に立ち止まって楽しく話し、笑った。

 けれども、ふとした瞬間――そう。常連たちがなんとなく、ここにいない誰かのために残しているかのように空いたカウンターの左端の席を見たとき。

 フィアナの心は、一抹のものたりなさを覚えるのだった。