「そんなこと言って、店に来てるとき以外にそいつがどんな人となりかは知らないわけだろ。俺の店だって、さすがに宰相のことに詳しい客なんていないし」
いや、でも衛兵あたりだったら、ちょっとは知ってるかな、と。前髪をくしゃりとかきながら、マルスはそう呟いた。どうやら彼は、本気でフィアナの身を案じてくれているらしい。
「ありがとう、マルス。でも、大丈夫。あのエリアスさんを好きになるなんて、天と地がひっくり返ってもあり得ないから」
そんな風に、フィアナはけらけらと笑い飛ばしたのだった。
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