「あ、どうも、ありがとうございます……。じゃ、なくて! あなた忙しいんでしょ? こんなに毎日店に顔を出していて、大丈夫なんですか?」

「フィアナさん……っ! 日夜仕事に明け暮れている私を案じてくださるのですか……!?」

「いや、酒場ばかりに入り浸ってないで、仕事しろって言ったつもりですし、ここにいる時点で明け暮れてませんよね!?」

 フィアナの声が聞こえているだろうに、エリアスは勝手に感激して瞳を潤ませている。こんなのがこの国の宰相だというのだから、世の中心配である。

 冷めた顔で見守っていると、エリアスは「大丈夫ですよ」と笑った。

「貴女に早く会いたい。そう思ったら、以前よりも仕事が捗るようになってしまいまして。もう限界だなどと思っておりましたが、貴女に出会い、私の中にまだ眠っていた力が引き出されてしまったようです。やはりフィアナさんは、私の救いの女神さまですね」

 にこっとほほ笑んだ顔に、不覚にも見惚れてしまう。

 だが、注意をしてほしい。イケメンだからと気を許してしまいそうになるが、相手は宰相。それ以上に、出会って数分で「女神だ!」などと愛を囁きだす残念イケメンさんだ。うっかりほだされてしまうには、面倒くさい相手すぎる。