~出会い~
 私はクラスでイジメに合った。仕返しなんて考えなかった。それをやったらいじめっ子どもと同類になると思ったからだ。
 いじめっ子どもは教師に怒られるも特に反省する様子はなく、これが私たちの日常ですと言わんばかりの当たり前な顔をしていた。
 教師は、カウンセリングを受けてもらうと言っていた。私はいじめっ子どもが受けるのだと思っていた。だって、イジメている人にこそ何かしらの病があるのではないかと思っていたからだ。
 でもそれは間違っていた。後日、カウンセリングを行う教室、相談室に私は呼ばれた。
 相談室のドアの前で私はこの学校には馬鹿しかいないのだろうと考えた。
 イジメられた側を優先はいじめ防止の最善策とは言えない。というか、日本はイジメは無いを前提に学校など運営する。大人はよく、世界は広いだな、学べだの言うのだが、それをするのは大人の方だ。海外では、イジメはあるを前提にしており、とある国ではイジメをすると理由はどうあれ犯罪歴が付く国だってある。
 日本は、自己保守することしか能にない、分かりやすく言えば、『赤信号、みんなで渡れば怖くない』主義国であるのだ。
 「はぁ」そう私は溜め息を吐き、相談室のドアをノックした。
 「はーい」と中から返事が聞こえた。私はドアを開き、「失礼します」と言って、ドアを閉めた。

「あなたが菅原さんね」

 そう声を掛けてきた女性。

「私はカウンセラーの弥栄、木本 弥栄(きもと やえ)と言います。今日はよろしく!」
「あ、はいよろしくお願いします」
「さぁ、座って」

 カウンセラーの先生、弥栄は普段着の上に白衣を身に纏っていた姿で、顔立ちは美人で髪の毛は茶髪。周りを明るくさせる空気を漂わせていた。
 私、菅原 圭(すがわら けい)は、パイプ椅子に座り、弥栄と対面した。

「それでは、カウンセリングを行いたいと思うんだけど、……取り敢えず、君は出て行ってもらえるかな」

 そう言って弥栄は、右斜め後ろを向く。そこには、暖房の前で本を読む青年…いや知っている奴だ。中間や期末などの定期考査で私と一位、二位を争う間柄だ。名前は甘噛 綾斗(あまがみ あやと)。ハンサムで女子からの人気も高い。スポーツ神経もよく、まさにキャピキャピ女子の理想とも言えるだろう。
 綾斗は私の方を見て、

「今日のカウンセリングは圭なのか!どうした、俺に中間で負けて病んじまったのか?」
「んっなわけないでしょ!期末で巻き返してやるんだから」

 売り言葉に買い言葉。興奮する私を見て、弥栄は、

「う~ん、仲の良い人がいれば話しやすいから、綾斗くん、今日だけはいていいわよ」
「え~、なんでこいつが」
「いいじゃないですか、ほら、学年一位が相談に乗ってやるぞ。勉強か、勉強を教えて欲しいか」
「結構です」

 綾斗に教えてもらうとか絶対にやだ。
 パンパンと手を鳴らし、弥栄は話し出す。

「それではカウンセリングを始めたいと思います」