政宗は待っている間、小春の荷物の整理をしようと『本』と書かれた片付け途中のダンボールを開けた。

「小春、これは本棚に並べたらいい?」

「うん、適当に。ありがとう」

一冊ずつ取り出し、丁寧に並べていく。
ふと、政宗の手が止まった。
取り出した本の題名が『傷痕の治し方』だったからだ。

やはり小春は手術痕を気にしている。
政宗はそれを何とかしてあげたくて、直己の立ち上げた医療品の開発を手掛ける会社に着いていくことに決めた。まだこれといった商品は出来ていないが、大学の教授と協力して研究には着手している。緩和ケアの分野に手を出すと無限の可能性が広がり、仕事の幅も大きく広がった。

「どれもこれも、小春のおかげだな」

政宗は呟いてそっと本棚に立てる。
小春を笑顔にしたいという想いだけで進路を変えた政宗は、今ではやりがいを見出だして日々忙しく楽しく仕事ができている。

「政宗くーん、できたよー」

美味しそうな香りを纏いながらパスタののった皿を持ってくる小春はニコニコと笑顔だ。

この笑顔をずっと護っていきたい。
改めてそう感じたのだった。