「あー、なんでこんな夢見ちゃったかなぁ?」

寝ぼけ眼で朝の支度をする。
久しぶりに子供の頃の夢を見てしまった。しかもそれはときめくような夢なんかじゃなくて、本当にあった苦い出来事。

「夢ならもっといい夢見させてよ」

私は誰に言うでもなく悪態をついた。

それもこれも政宗くんのせいだと思う。
ここ数年顔を見なくなったのに、昨日突然うちのおにぎり屋に顔を出してくれたからだ。

昔と変わらずかっこよくて聡明な政宗くん。
スラリと伸びる足が長くて、ネクタイをきゅっと締めたスーツ姿がよく似合っていた。

かっこいい……。
そう思った瞬間、もう諦めたと思っていた恋心が再燃した気がした。

政宗くんが私を見て微笑む。
それだけでドキドキと胸が高鳴るようだ。
だけど……。

「はーー」

私は大きなため息をついた。
今さら政宗くんとどうこうなる訳がない。
私は政宗くんにフラレているのだから。