「小春ちゃん、どうしたの?」

「実里さん……」

「何かあった?変なお客さんがいたとか?」

フルフルと小春は首を横に振る。
実里の気遣いが胸に染みて、小春は無性に泣けてきた。それを察した実里は小春を店頭から奥へ引っ張って行く。

「優也、店番よろしく」

「え?おお……」

ポカンとする優也をよそに実里は小春を外から見えない位置に移動させ座らせると、自分もその横にどかっと腰を下ろす。

「さあ、話を聞こうではないか」

冗談めかして言う実里がとても頼もしく見えて、小春は思わず笑みをこぼした。そして、先ほど見てしまった政宗と助手席の女性のことをポツリポツリと打ち明けた。

「なんかわかるな、その気持ち。私にもそういう時があったよ」

一通り話を聞いた実里は懐かしむように遠くを見る。その先には優也が一人店番をしていて、実里は自虐的に笑った。

「実里さんも?」

「そうよ、私は小春ちゃんに嫉妬してた」

「私に?」

「最初は兄妹だって知らなくて、仲いいから彼女なんじゃないかって嫉妬してたの。そしたら優也とケンカしちゃってさ。話し合ったら妹だったってオチでなんだか拍子抜けよ」

ふふふと実里は綺麗に笑う。
実里と優也にそんなトラブルが発生していたなんて、小春はまったく知らなかった。