セミが鳴き、本格的な夏がやってきた。

「政宗くん、好きです」

決死の思いで告白した中三の夏。
真っ赤になりながら必死に訴える私に、一瞬びっくりした様子で、それでもありがとうと優しく笑った政宗くんは二十一歳。

全くもって本気に取ってもらえなかった。
私はまだ子供なんだと思いしらされた、夏。

それでも必死に取り繕って、いい子を演じた。

「そう、そうだよ。お兄ちゃんの友達としての好きだよ。だからこれからも遊んでね」

って。
そうしたら政宗くんは、

「もちろん。俺も小春が好きだよ、受験頑張ってね」

って。
一見甘そうで、とんでもなく苦い思い出だ。