奪って、浬くん




「なこ」


やさしくわたしの名前を読んで、手を絡めてくる浬くん。


そうだ、浬くんはずっと────わたしに触れるとき、やさしい表情をしていた。


心の奥のほうが、きゅっと縮んで、あったかくなる。



.....わかっちゃったよ、浬くん。



熱い手のひらを、ぎゅっと握り返して。


そっと唇を離して、目を合わせた。




「───わたしのこと、すきでしょ」



浬くんの真似っこのつもりで、片方の口角をあげてわらってみせる。



浬くんはほんの一瞬、面食らったようなカオをして、ちいさく目を見開いた。



....かとおもったら、口の端をゆるりとあげて。



「せーかい」


とびきりやさしくて、あたたかい笑みを浮かべながら。


こつん、と額を合わせてきた。