この幸せが一生続けばいい――そんな風に思っていた。
 それなのに、六歳になったある日、私の人生は狂わされた。
 大好きな、誰よりも大切な妹によって滅茶苦茶にされたのだ。



 水音が室内に響いている。
 辺りに漂っているのは、鼻を摘まみたくなるようなカビの臭い。
 ここは地下牢だ。燭台には蝋燭のカスがこびり付いているだけで、明かりはわずかに空いた格子窓から差し込む陽光のみ。薄い春の日差しは室内を暖めるには足りず、底冷えする部屋の中で、私は薄汚れた毛布を頭から被ってひとり小さく震えていた。
「〝お姉様〟! ご機嫌よう!」
 その時、コツコツと足音がして、誰かが地下に下りてきた。
 鉄格子の向こうに現れたのは……ローゼマリーだ。
 妹は、薔薇色の髪によく映える純白のレースワンピースを着ている。
 ローゼマリーは指でスカートの裾を摘まむと、淑女らしい気取った礼をした。