森のざわめき。降り注ぐ木漏れ日。土の匂い。
 ――外なんて久しぶりだなあ……。
 ふかふかの腐葉土の上に仰向けになり、ぼんやりと空を眺める。
 十年ぶりに地下牢から出たせいか、太陽の光が眩しくて仕方がない。
 頬を撫でる風はどこまでも優しくて、このまま眠ってしまいたいくらいだ。
 ――寝ている場合、じゃないんだろうけれど。
 目だけを動かして、周囲の状況を確認する。辺りには鬱蒼と木々が生い茂るばかりで、民家などは見当たらない。紛れもなく森である。クライゼ家の庭なんかではない。
 なぜ、こんなところに私がいるかというと、この場所に〝捨てられた〟からだ。
『あなたを廃棄させていただきます』
 これは、ある日地下牢にやってきたメイドが私に放った言葉だ。