「あ……ああ……」


それは便器の中。


ぐちゅぐちゅ、バキバキと、一体何の音がしているのかと気になったけれど、怖くて見たことがなかった物音の正体。


腕や脚、切り刻まれた内臓や身体が、その中に放り込まれていたのだ。


そして虚ろな目でこちらを見上げる顔。


「何これ……何よ何よ何よ何よ! 何なのよこれ! なんでここにこんな……」


恐怖が、足元から身体を撫でるように駆け上がって来る。


まるで無数の手に頬を撫で回されているかのような、強烈な不快感に襲われる。


1人や2人じゃない!


何十もの人が、切り刻まれてここに捨てられているのだ。


「ま、まさかまさか……あの時の音って!」


私がトイレに入った時、便器の中から聞こえた、何かが落ちる音。


無数の手が足首を掴んで引きずり込もうとしたこと。


そして、ぐちゅぐちゅ、バキバキという音。


全て……「これ」に関係することだったんだ。


それに気付いてしまった時。







とても静かな。



自分の心臓の音が聞こえそうなくらいに静かな。






痛いほどの静寂が訪れた。






そして。










「あんたも早く、こっちに来なよ」









便器の中に落とされた頭が、嬉しそうに笑ってそう語りかけたのだ。