~現在~
「ふぅん。昭和63年の12月にこんな事件があったんだねぇ。アリスは知ってた?」
「あの廃屋でしょ? あんなにボロボロなのに、取り壊そうとすると作業員が必ず死ぬって有名な幽霊屋敷だよ? なに、由奈は知らなかったわけ?」
「幽霊屋敷は知ってたけどさ、まさかいっぱい人骨が出てたなんて、私は知らなかったよ」
夕方の教室、オレンジと黒のコントラストが、どこか物悲しく思える時間。
アリスと由奈の2人は時間潰しの為に、スマホで話のネタを探していた。
「なんかさ、そこに住んでたおじいさんがヤバかったらしくてさ。観光客を連れ込んでは殺してぼっとん便所に捨ててたらしいよ。挙句の果てには家族全員皆殺しでさ。おじいさんが死んでから家の中を調べたら、出るわ出るわ」
「ひええ……そんなことがあったんだね。その家ってあれだよね。あの大きな公園の近くにある家だよね」
「ああ、そうそう。そこそこ。そのおじいさんに殺された人の怨念が、今でもその家に取り憑いてるらしいよ。怖がりの由奈が行ったら、あっという間にお漏らししちゃうだろうね」
意地悪くそう言って笑ったアリスに、由奈は唇を尖らせて不服そうな顔をして見せた。



