おうちかいだん

その場で立ち上がり、顔を上げると……ボロボロの廃屋があるだけだった。


矢沢千晶。


稲葉勝。


浜崎美愛。


松田美菜実。


北島瑛二。


米津咲。


彼らは、どんな思いで私に生前の記憶を思い出させたのかはわからない。


ただ、感じるのは、お父さんと同様にこの家の住人だった私のことも、等しく憎んでいたに違いないということだ。


望まれてこの場所に戻って来たけれど、彼らの望みはそれだけじゃない。


いつの間にか、私を取り囲むようにして現れていた6人の顔を見回して、私は小さく頷いた。


「わかってるよ。私にも消えろって言いたいんでしょ」


私の死の真相が知れた。


諸悪の根源を消滅させることができた。


だから、私に未練はもうない。


ただひとつ……私を取り囲む6人も同じことを思っているだろうけれど。





「出来るなら……普通に生きたかったよ」





深い悲しみと寂しさの中で、私は涙を流した。


私は6人に見送られるように、静かに消えていった。


私が生きた17年間は、意味があるものだったのかな。


もしも次があるのなら、次こそは普通に……ただ普通に生きてみたい。