おうちかいだん

深く、記憶の中からその時の状況を思い出せば、他にも見知った顔が浮かんでくる。


トイレに入ってすぐにいた幽霊。


あれは……稲葉くん。


稲葉勝だ。


それだけじゃない。


便槽の中から私を見ていた顔。


あれは北島くんだ。


どうして私の記憶の中に、学校で出会った人達が。


階段のフックに吊り下がっていた人は松田さん。


矢沢さんと浜崎さんも、お風呂場で死んでいたクラスメイトだ。


つまり私は……この家に関係のある人達に、この家の話を聞かされたというの?


学校で出会った人達は全員、私の記憶の中にいる幽霊だったってことだ。


「くっ! どうしておばあちゃんを……おばあちゃんを殺してあんな場所に!」


私が尋ねると、目の前の老人は少し寂しそうな目をして。


「母さんは優しい人じゃった。本当に大好きじゃったから……どこにも行かないように殺してあの戸棚に祀ったんじゃよ! あの場所に行けば母さんがいる! いつでも会えるからのう!」


本当に救いようのない人だったんだね、私のお父さんは。


聞けば聞くほど、知れば知るほどお母さんも酷いけれど、それよりも断然酷いのがこの老人だ。