おうちかいだん

生きていた時、この部屋はジメッととしていてあまり好きではなかった。


陽当たりも悪いし、陰気な感じがしていたから。


部屋の奥にある襖を開けて、さらに隣の部屋に入ると……おじいちゃんが入り口に背を向けて床に座っていた。


「誰じゃ。ミサちゃんか? ほら、こっちに来なさい」


昔はなんとも思わなかったこの言葉にも、今ならはっきりと違和感があるのがわかる。


「私はミサじゃないよ。私は……リサだよ」


「なに……リサじゃと?」


私がそう言うと、おじいちゃんは低く唸るような声で答えながら振り返った。


どれだけ長生きしたのか、私が知っている最後のおじいちゃんの姿よりも、随分老けてしまっている。


「なんじゃ。ミサちゃんじゃないか。ワシはこんなに老けちまったのに、全然変わらんのう」


自分の横の床をバンバンと叩いて、ここに座れとでも言いたげだ。


「そうだね。私は高校生の時におじいちゃんに殺されたからね。覚えてるかどうかも怪しいけど」


そう。


ずっと感じていた違和感は、三面鏡の話を聞いた時から今まで、変わらずに心の中に存在している。


「いい? もう一度言うよ。私はミサじゃない。リサよ。おじいちゃん……いえ、お父さん」