ぼっとん便所の中を覗くと、何かがもぞもぞと蠢いているのがわかる。





「あぁ……苦しい……苦しい……」


「誰か助けて……ここから出して……」


「暗い……狭い……臭い……」





バラバラにされ、肉片となった身体が、頭部が、もがきながら苦痛に満ちた声を上げている。


それはまさに地獄そのもの。


今までに無慈悲に殺され、捨てられた人達の怨念溜まりとなっている。


ここに誤って落ちでもしたら、幽霊の私でもタダでは済まないだろうと感じる。


それほどまでにおぞましい、この家で一番悪意と怨みが渦巻く場所になっていると感じた。


そう言えば、この家の中でトイレだけは別格と言っていいほど多くの幽霊が見えた場所だった。


最も危険で、最も命の危機を感じた場所。


無意識に、こういうのを感じ取っていたのだろう。


私はトイレを出ると、奥の階段を上ろうとした。


お母さんの部屋が……あの三面鏡が置かれている部屋に続く階段だ。


だけど、この階段は崩れ落ちていて、私がいくら触れても元には戻らなかったのだ。


「あと少し調べたいのに。どうやってもこれは上れないわね」


そう考えて、上るのを諦めようかと思った時。


私はある光景を思い出した。