「あ、あうう……」


空気が漏れているかのような音と共に、確かに唸り声のようなものが聞こえた。


振り返ってみると、浴槽に入って顔中傷だらけの血塗れで、私を見上げる女の子の顔。


そして、洗い場で苦しそうに私の足首を掴む女の子がいた。


顔の損傷が酷くて、元がどんな顔だったかは忘れたけど、何かを訴えようとしているような……いや、違うかな。


きっと、こんなことになったのは私のせいだと恨み言のひとつも言いたいに違いない。


でもおかしいな。


ここに入ったクラスメイトは3人のはずなのに、1人の姿が見えない。


比較的損傷が少なかったから、誰かわかるかもと一瞬考えたんだけどな。


「あなた達を殺したのは私じゃないでしょ。私を恨むのは筋違いだよ。恨むなら、あなた達を殺したお友達にでも言うべきじゃない?」


そう言って、私の足首を掴んでいる手を蹴り飛ばすと、風呂場から出てドアを閉めた。


もう二度と、そこから出てこられないように。


「死体の処理……となると、やっぱりあれは、実際に行われたことだったのかな」


脱衣所を出て、顔を向けたのはトイレ。


3人家族で使っているには大きな、民宿時代の名残りがあるトイレだ。