「んー……大丈夫。私ってば、今日も綺麗。あ、ごめんごめん。藤井さんはもう帰るの?」


「……まだ帰れないみたい。完全に思い出したわけじゃないから」


多分、こんな言い方をしても米津さんにはわからないだろうな。


いや、もしかすると私の前に現れたということは……この米津さんも何かしら話を知っているのかもしれない。


「あら、そうなの。私も帰りたくなくてさ。ちょうど良かった。私と遊ばない? お互い暇潰しになるなら良いと思うんだけど」


パンッと手を叩いた米津さんに少し驚きながらも、私は考える間もなく「ええ」と返事をした。


不思議に思っていた。


放課後とはいえ、私が出会った人達は少なくて、その人達全員が死んでいるのだ。


となると、この米津さんも死ぬことになると思うけど……それよりも、私に何を思い出させてくれるのかということの方が気になっていた。


「じゃあそうね。どこかに座ってお話ししようか。外のベンチでいいかな」


返事をするより早く、米津さんは私の手を取って歩き始めた。


きっと、これまで私に話を聞かせてくれた人達と同じように、私がその話を聞くのは運命なんだ。


私が記憶を取り戻す為に必要なことなんだ。