「あんたまた残して。どうしたの、本当に風邪でもひいてるの?」


そう言ってお母さんが私の額に手を当てるけれど、首を傾げてすぐに手を離す。


そもそも食べられない原因が体調不良ではないのだから、熱がなくて当然なんだけどね。


何度言ってもお母さんには否定されるかもしれないけど、わかってもらえるまで何度でも言うしかないかな。


「お母さん、あのね……」


と、顔を上げて、昨日の夜からのことを話そうと口を開いた時だった。


突然、バンッと戸棚が開き、昨日の夜に見たミイラが戸棚の中から私を睨み付けたのだ。


それと同時に天井から垂れ下がる大量の髪の毛。


「ひ、ひぎゃあああああっ!」


あまりにも恐ろしい出来事に悲鳴を上げて、私は台所から逃げ出した。


自分の部屋に戻って布団を頭から被り、御札の切れ端をポケットから出して祈るように握り締める。


来ないで来ないで!


もう言いませんごめんなさいごめんない!


戸棚ももう見ようとしませんごめんなさい!


何も言わずにご飯を食べますから許してください!


何をどう祈ればいいかもわからないまま、あまりの恐怖に泣きながら、ただひたすらに祈り続けた。