それでも台所に行かなければならない状況には必ずなるもので、それは私がどれだけ嫌だと言っても起こるものだ。


「晩御飯よ!」


お母さんのこの声が、こんなに不愉快に思えたことはない。


夕食が作られてから「いらない」と言ったらお母さんに怒られてしまうのに、台所に行くのが怖くて言わなかった。


それに、体調不良で食べたくないわけじゃないから、普通にお腹は減っているわけで。


どっちにしても台所に行かなければならないなら、少しでもご飯を食べた方が良いかな。


「はーい……」


力なくそう返事をして、私は行きたくもない台所に向かった。


引き戸を開けると、すでにおじいちゃんとお母さんは席に着いていて、いつものようにおばあちゃんだけ離れた場所で私達とは違う料理を食べている。


無言で席に着き、戸棚を気にしながらご飯を食べる。


「あんた、まだ戸棚を気にしてるの? お母さんね、昨日調べたんだから。あの戸棚の扉は固くて開かないし、開くなんてことは絶対にないんだからね」


チラチラと戸棚を見る私を気にしてか、不機嫌そうに言ったお母さん。


なんだかんだ言って、調べようとしてくれたんだ。


それは素直に嬉しいことだった。