「ひっ!」


小さく悲鳴を上げても、垂れ下がる髪の毛が止まらない。


ドサリドサリと落下して、床に落ちた髪の毛の束がまるで生き物かのようにうごめき始めた。


「お、おばあちゃん! ほら! いるよ! 絶対に何かいる!」


その髪の毛の束は、まるで何か意思があるかのように私の方に這って近寄って来る。


それなのに……。









「おかしなことを言うもんだね。しっかり閉まってるじゃないか。おばあちゃんをからかわないでおくれ」








おばあちゃんには見えていないようだった。


「え、う、嘘だよね!? こんなに髪の毛が……や、やだ! こっちに来ないで!」


あまりの気持ち悪さに、私はその場から逃げるようにして自分の部屋に戻った。


あの髪の毛の束も、戸棚の目も、どうやら私にしか見えていないみたいで、助けを求めようにもおばあちゃんが見えていないならどうしようもない。


部屋に戻っても、まだ髪の毛の束が追い掛けて来ているんじゃないかと、襖を開けて台所の方を確認するけど……どうやらここまでは来ないようだ。


部屋の中にも変化はなくて安心したけれど、台所に行くのが怖くなってしまった。