学校から帰って、宿題を済ませてすぐに、台所にいるおばあちゃんのところに向かった。


椅子に座り、戸棚を正面に見ながらおばあちゃんに話し掛ける。


「おばあちゃん……やっぱり、あの戸棚の中に何か変なものが入ってるんじゃないのかな。私ね、昨日の夜に怖いものを見ちゃったんだ」


私がそう言うと、おばあちゃんは晩御飯の仕度をしている手を止めて、戸棚の方に顔を向けた。


「戸棚の中に? そんな話は聞いたことないねぇ。夢でも見たんじゃないのかい?」


まあ、そう言われるだろうと思っていたよ。


私だってあの髪の毛を見るまで夢だと思っていたから。


でも、その証拠だって煙みたいに消えてしまったし、夢じゃないという証拠が残っていないからどうしようもない。


「ち、違うの! 夢じゃないの! だって私が起きた時に……」


そこまで言って、おばあちゃんを見ていた私は視線を戸棚の方に向けた。


何かが、視界の端でチラチラと動いた気がしたから。


おばあちゃんはまだ戸棚を見ていたけど……どうして気付いていないの!?










ゆっくりと戸棚から垂れ下がる黒い髪。


そして少し開いた扉の隙間から、私を見る目が確実にそこにあったのだ。