翌朝、私は布団の中で目を覚ました。


慌てて飛び起きて、部屋の中を見回しても、あのミイラも天井一面の髪の毛もない。


「ゆ、夢!? よかった……夢だったんだ」


汗をびっしょりかいて、まるでおねしょでもしたかのように濡れている布団を見ながら、安堵の吐息を漏らした。


そうだよね。


いくらなんでも、あんなのが実際に起こるはずがないんだよ。


私の夢だったというのなら納得もできる。


怖くてずっと握りしめていたこの御札のせいで、あんな怖い夢を見たのかもしれないな。


そう思ってゆっくりと手を開いた私は、背筋に氷でも当てられているかのような悪寒と気持ち悪さを感じ身体が震えた。


開いた手……そこにある御札の切れ端。


そして、一緒に握られていた、明らかに私のものではない黒い髪の束。


「な、なにこれなにこれ! い、いやっ!」


あまりの気味の悪さに、投げ捨てるようにその黒い髪の毛と御札の切れ端を手から離した。


すると、御札の切れ端はヒラヒラと床に舞い落ちたのに対し、髪の毛は空中でモヤのような物に変わって消え失せてしまったのだ。


何が起こったのかわからない。


どうして私があんなものを握っていたのかもわからない。


ただ、もしかすると夢だと思っていたあれは、夢じゃなかったんじゃないかって、そう思えた。