ズル……。
ズル……。
来る……来るっ!
ヤダヤダ来ないで!
この時点で既に腰が抜けていて、立ち上がることも出来ずに。
このミイラと同じように床を這うしか出来なくなっていた。
こんな状態でどこに逃げれば良いのか。
おばあちゃんに助けを求めようとしても、気付いてもらえなければ私は捕まってしまうよ!
「ギ……ギギ……ギ……」
何か声を発しようととしているのか、気味の悪い音が聞こえている。
逃げるにしてもどこに逃げればいいの!
私は慌てて自分の部屋に戻って、障子を閉めた。
そして、ゆっくりと後退りをして、御札の切れ端を握って震える。
「お、お、お願い……来ないで。開けたのは謝るから来ないで……」
そう祈り続ける私の視界が、スーッとカーテンが下りるかのように上から暗くなり始めた。
何が起こっているのか全くわからなくて、目をキョロキョロさせて部屋の中を見る。
怖くて瞼がおりてきてるのかなと思ったけど違う!
本当におりてきてるんだ!
黒い髪の毛が、この部屋の天井一面から!
そう気付いた時にはもう遅かった。
私しかいないはずの私の部屋なのに……両肩を背後から掴まれて。
恐怖で震えて動かない顔を横に向けると……私を覗き込むように、ミイラの顔がそこにあったのだ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
私は悲鳴を上げて、意識を失った。



