彼は腐女子を選んだ

「……あきら、身体、壊してへん?……どんどん痩せてる気がする。……映画の役作り、って誤魔化してたけど……」


……どんなに隠しても、わかる人には、やっぱりわかるんだな。

岩崎はるなは、特にあきらと親しかったし……もしかしたら、仕事だ映画だと言ってるのも嘘だと見抜いてるのかもしれない。


しかし、荒川弓子のように事情を知っているわけではなさそうだ。


ヘタなことを言うわけにはいかない。



私は、何も気づいてないふりを貫くことにした。

「そうか?もともとゲソゲソに細いと思うが。あきらがもう少しマッチョなら、妄想の余地もあるのだが、あれだけ細いとネコだよな……。リバだとしたら、相手は少年か……」 

「もう!何の話をしてるのよ!サイアク。」


岩崎はるなは、呆れて帰って行った。


……たぶん当分また悪口を言われるだろうが……いたしかたあるまい。

ほっておこう。


それより、あきらだ。

しかし、先生がお土産を届けに行くなら、今日は私は遠慮すべきかな。




とりあえず、あきらに帰国を伝えるラインを入れて、帰宅した。


「ただいまー。……お客さん?」

玄関に、白いハイヒール。


恐る恐る居間に行くと、両親と兄上、そして、色白のすっとした綺麗な女性が歓談していた。


……誰?


「あら、おかえり。楽しかった?」

母がやっと私に気づいた。


「うん。……こんばんは~?」

知らないひとだけど、とりあえず会釈して挨拶してみた。


すると女性はすっくと立ち上がり、完璧な笑顔を作って言った。

「正美ちゃん?はじめまして。お邪魔してます。鈴木るう、と申します。仲良くしてくださいね。」

「……はあ……るうさん……。」


わけのわからないまま、両親を見た。

ら、兄上が渋い顔で言った。

「秋に結婚する。子供ができた。」

「え……。」

できちゃった婚……。


呆然としてたら、クスッとるうさんが笑った。


父が、言いにくそうに言った。

「その言い方は誤解を招くから、やめなさい。……正美。正也とるうさんは、学生時分からお付き合いしてたんやけど、お互いに忙しくて、なかなか結婚ということにならなかっただけやから。」

「はあ。……じゃあ、るうさんも、お医者さん?」

私の問いに、るうさんは笑顔で答えた。

「ええ、そうよ。隣の市の大学病院にいるから、何か困ったことがあったら、遠慮なく相談してね。」