彼は腐女子を選んだ

翌朝からの行程に、何故か荒川弓子がくっついてきた。


「だって、クラスに友達とかいいひんもん。……先生が、好きな班に混ざっていいって言ったし、いいでしょ。」

「はあ。まあいいけど。」

「わー。一緒にいっぱい写真撮ろ~。」

「私もー!」

「かわいい!頭ちっちゃい!すごい!コスプレしてほしい!」


チームオタクは、誰も反対しなかった。


クラスの最低カーストのチームオタクに、荒川弓子がいることに、みんなびっくりはしてたけど。


荒川弓子は、オタク全開な行程に文句をつけることもなく、意外と楽しんで、BLに興味を抱いたらしい。

ドリアンの匂いだけは、受け付けなかったらしく、絶対口にしなかったけれど。

まあ……石油と生ゴミみたいだもんなあ……。

でも口に入れたら、普通に美味しかったよ。


風邪ひいてるときのほうが、抵抗なく食べられるかもね。



「あきらへの土産、ドリアンってわけにはいかないよな。」

ホテルにも飛行機にも持ち込めないといは言われているが……缶詰ならいいかな?


「ちょっと!やめてよ!あきら、優しいから、無理して食べるわ!」

目を三角にして怒る荒川弓子に、ひかりんも頷いていた。


「……いや。まあ……缶詰なら……。」

「却下!ちゃんとしたの、考えてあげて!」


みんなに叱られて、私は渋々ドリアンを諦めた。




最終日は、何もせずにリゾートを楽しむはずだったのだが、結局、あきらへのお土産探しに奔走することになってしまった。

「つきあってる堀正美だけじゃなくて、なんで、みんながみんな、あきらに買ってくの?」

不思議そうな荒川弓子に、ひかりんが言った。

「だって、みんな、あきらが大好きやし。……うちのクラス、今、あきらのおかげで、すっごくまとまってるねん。みんなで輪になってお弁当食べるとか、高校生にもなって、する?……うちらオタクに対してだけじゃなくて、あきらは誰に対しても優しいし。……みんな、この旅行で、あきらと写真いっぱい撮りたかったのにね。……て、ガッカリしてても仕方ないから、あきらを喜ばせるために、みんなが写真とお土産あげることにしてん。」

「……幼稚園みたい。」


多少呆れたようだったが、荒川弓子は参加表明した。


「……私も、買うからさ、一緒にあきらに届けてくれる?」

「うん?直接渡さへんの?……もしかして、日本、帰らへんの?」