彼は腐女子を選んだ

放課後、あきらと2人で帰路に就いた。

私は自転車を押して、ゆっくり駅まで歩いた。



道すがら、あきらが謝った。

「……ごめん。正美ちゃん、しんどかったんちゃう?」

「まあ?想定内。気にせんでいいよ。……しかし、お弁当の中身はもう少し考えてもらったほうがいいな。お母君に言うべきだ。消化に血を使うから、弁当のあと、貧血気味になるんやと思う。揚げ物、牛肉は、やめてもらったほうがいい。」


そう言ったら、あきらは驚いたらしい。

「え……。俺、貧血?……え?」

「……気づいてないのか?」


私も、びっくりした。


そうか。

本当に、気づいてなかったのか。


「たぶん。午後からあきら、顔色が悪いこと多かったのは、がっつりランチの消化に血をもってかれるからだと思う。手足がむくんだり、肩が痛くなったりしなかったか?」


あきらの目が泳いだ。

しばらくして、あきらは大きく頷いた。

「……正美ちゃんの言う通りやと思う。確かに……夕飯のあとも、しんどくなるし……手足がだるいことも多いわ。……病気のせいやと思ってあきらめてたけど……そうか……食事の内容見直したら改善するんや。知らんかったわ。」

そして、私に笑顔を向けた。

「ありがとう。正美ちゃん、すごい。……もしかして、俺の病気のこと、勉強してくれた?……ごめんな。」

いつものキラキラじゃなくて、どこか儚げだった。


何となく悲しくなってくるじゃないか。


私は、敢えての上から目線で、雄々しく言った。

「当たり前だ。私は、あきらのカノジョだからな。あきらがしんどくならんように気を配るのは当然のことだろう。謝ることじゃない。」

「……ありがとう。」

あきらの目が、少し揺れていた。


私は、小さく「気にするな。」と、つぶやいた。



……あきらが泣きそうで見てられなくて……前を睨み付けて、歩いた。


***

翌日、想定外の事態が起こった。

なんと、今さら、あきらに告白してくる子が激増した。



「いや。俺、カノジョいるから!」

あきらは、ひたすら断り続けたが、納得できず引き下がらない子がかなりいたらしい。


「……つまり、今まではさ、あきらは高嶺の花で、普通の子は近づくのも恐れ多いとあきらめて遠くから憧れていたのよね。なのに、突然、あきらが作った恋人が、オタクのまさみんなんだもん。……さすがに、まさみんよりは自分のほうがイイ女だと自負する女子たちは、納得できひんみたいよ。……昨日めっちゃ悪口ゆーてたから、こうなりそうな気はしたけど……みんな、図々しいねえ。」