杉森くんは、ちょっと困ったような顔になった。

「あー……うん、えーと……そうやねんけど……ちょっと、ココでは言にくいというか……」

「ふうん?ほな、どこ行く?マクド?」

「……ごめん。あんまり人に聞かれたくないねん。」


申しわけなさそうにそう言われて、私も困った。


「何なん?サプライズパーティーでもしたいの?」

「……あー、じゃあ、とりあえず、歩こうか。……河原まで行ってから、話していい?」


河原なら、そう離れてない。

今日は風もあるし、気持ちいいだろう。



私は黙ってうなずいた。




途中のコンビニで杉森くんが、アイスクリームとドリップコーヒーを買ってくれた。

河原のベンチに並んで座って、まずはアイスを食べた。

深めのカップにたっぷりのクリーム、その上にフルーツが並んだパフェのようなアイスは、何だかとってもおいしかった。



「……で?」

アイスを食べ終えて、少しぬるくなったコーヒーを一口飲んでから、聞いてみた。


「うん。」

杉森くんは、アイスコーヒーの氷をからからいわせて、しばし逡巡していた。


普通なら、早く言え!と急かすところだが……至近距離からこんなイケメンを見るという初体験に、私は浮かれていた。

いや、それを言うなら、イケメンと一緒に帰るのも、イケメンと河原で疑似デート体験も、初体験だが。


やー、やっぱり、杉森くん、きれいだわ。

見とれる……というよりは、どうしたらこの綺麗な造形を二次元に謄写し、かつ、私流に描き直せるかを思案した。



ふっ……と、杉森くんが笑った。

その笑顔が、あったかくて……たじろいだ。


「堀さんてさ、何、考えてるかわからへんねんけど……いつも、すごく楽しそう。」

「へ?」


何を言われてるんだろう。

それは……オタクを理解することはできひんけど、存在をウザイと感じることはない、ということだろうか。


「まあ……勉強とか学校行事とかの義務以外は、自分が、楽しいことしかしないから。」

そう返事したら、杉森くんは、うんうんとうなずいた。

「いいなぁ。それ。すごくいい。」

「そう?……ウザがられることも多いけど。」

「でも、気にせえへん?」

「……そうやね。気にしてもしょうがないし。」



全人類と100パーセント理解し合えることなんかない。