よく晴れた雲1つない、朝。
うるさいくらいに外からは、セミたちの大合唱が聞こえてくる。



また同じ毎日が始まる。

ぼーっとする頭を夏の暑さが現実へと引き戻す。


そして階段を誰が登ってくる音が微かに聞こえる。



「おはよう、お母さん」

ガチャっと音を立てて扉が開いて
毎日の当たり前を持ってやってきた。

「はい、熱測って。腕出して」

お母さんから手渡された体温計を
脇に挟めて腕を出しパジャマを膝まで
捲り上げる。


出した腕にお母さんは、手際良く
血圧計を巻いていく。


ブーっと機械音がして計測系が動き出す。


「体温計、熱ないよ」

音が鳴った体温計をお母さんに差し出す。

「熱無いみたいだね、体調悪いところない?痛いところとか」

「大丈夫ないよ、今日はいつもより調子がいいんだ」

「よかった、うん。血圧も大丈夫そうね。学校行けそうなら行く?無理しなくてもいいのよ」


お母さんは、器具たちをしまいながら問いかけてくる。


「昼からいこうかな……」


「わかった、ゆっくりでいいから着替えてリビング降りておいで」

パタンっと扉が閉まる。

「はぁ…………」

毎日同じ行為、同じ質問嫌になる。

でも、仕方ないけどね。
私がこんなんだもん…。


私、橘真優(たちばなまゆ)。
一応高校1年生。
でも学校は、全然行ってない。

入学式を終えてから体調が前より悪化したため仕方ないけど学科にいくのを少しばかりやめていたけれど。

最近は、体調もよくなりたまには行くようになったばかりだ。
 

ただ、季節は春を超えて夏へと変わって
しまっていた。


子供の頃に脳の病気にかかって
手術して腫瘍は、全て取り除いたみたい
だけどいつ再発するかわからないんだって。

病気のせいで頭痛とか吐き気とかあったり
体が怠くて起き上がれなかったり色々あって
学校は、行けてない。

看護師のお母さんと会社員のお父さん。
中学生の弟と4人家族。

どこにでもいる普通の家族。
何が違うかって言ったら私が病気だってことだけ。



「とりあえず、パジャマから着替えるか」


クローゼットから上下セットのスエットを
出して着替える。


窓の外をふと見ると鳥たちが電線に
止まって何か話をしている。


「いいな、楽しそうで。こんなに毎日同じで本当につまらない。いつ再発して死ぬかもわからない。こんな日々だったら無い方がいいのにな…。楽しいことなんて何もない」


こんな生活をこの先ずっとしなきゃいけないのかな??



窓の外では、自由に鳥たちが羽ばたいている。

そんな鳥たちを眺めて私は、自分の
部屋を後にした。



「おはよう」


リビングに行くと出勤前のお父さんと
登校前の弟が朝ごはんを食べていた。


「真優、今日は体調いいのか??」

コーヒー片手に新聞を読むお父さんが
リビングに入ってきた私に問いかけた。


「今日は、割と体調いいんだ、だから昼から学校行こうかなって思ってるんだ」


「そうか、無理して行かなくていいからゆっくりしてなさい」

コーヒーを飲み干し鞄を持ちリビングから出て行った。


「はーい……」


お父さんの背中を見送りソファに座る。


「本当母さんも父さんもねぇちゃんに過保護だねー」

弟の瑠衣が朝ごはんをたべながらちらりとこちらを見る。


「仕方ないでしょ、真優は病気なの!瑠衣みたく元気じゃないの」

キッチンにいるお母さんが瑠衣に言葉を投げかけた。


「はいはい、わかってますよ」


「ねぇちゃんは、病気。でも病気だからってずっと家にいてもな」

「いいから早くご飯食べて学校行きなさい!」


瑠衣は、お母さんに急かされ朝ごはんを
かき込む。


「わかったよー、ねぇちゃん言ってくる」

瑠衣は、手をひらひらとさせて
学校へと向かった。


瑠衣の言う通りお父さん、お母さんは
かなり私に対して過保護だ。


病気のことで心配してるのは、わかる。
それにしても過保護すぎる。


休日好きなところに出かけるなんて出来ないし。

学校も本当は、少し言って友達いないから作りたいし。


だけど2人は、何かあったらとなかなか
うん、とは言わない。


仕方ないんだけどね………。


だから私も心配させないように2人の事を尊重して自分を押し殺して我慢する。

心配させたくないから…。