「どういうつもりか知らないけど・・・この子に近付かないで貰えるかな?」


今にも掴みかかりそうな雰囲気を醸し出しながら、航平は編入生に言った。


「ちょっと・・・航平!?」


その場の雰囲気と集まった皆の視線が気になって、あたしは慌てて航平の腕を掴んだ。


「あたしは平気だから」

「でも・・・」

「ホント平気だから」


そう言って掴んだ腕に力を込めた時。

教室に凛とした声が響いた。


「ひなこがそう言ってるんだから、ここは抑えた方が良いんじゃないかしら?」


航平と編入生の彼の間に割って入った葵が、いつもの口調でそう言った。


「まったく。ひなこの事になると、堤君は冷静じゃなくなるんだから・・・」


そう言ってため息を吐くと、葵は集まった生徒達に向かって声を張り上げる。


「ほらほら、皆 席に戻って?もうすぐ授業が始まるわよ?」


パンパンと手を打ち鳴らしながら、教室に入り込んでいた他のクラスの生徒を教室から追い出すと、葵はこめかみを押さえながら編入生に向き直った。


「ただでさえ目立つんだから、余計な面倒は起こさないで欲しいわ」


そう呟いた後、葵は英語以外の言葉で彼に話しかける。

葵の言葉にただ無言で頷き返した彼は、あたしに向き直ると手を差し出した。


「あ、あたしの携帯・・・」


その手に握られていたのは、朝から探していたあたしの携帯だった。