「そうじゃなくて!」


机の横に置いてある自分の鞄を引っ張りながら、あたしは口を尖らせた。


「ホントに鳴らなかったの!あたし、バイブにしてても気付くもん」


証拠を見せようと、鞄の中に手を突っ込んで携帯を探す。


「・・・あれ?」


あたしは鞄の中を覗き込み、入っていた財布やポーチ、生徒手帳を取り出して、鞄を逆さまにする。


「・・・無い」

「ひなこ?」

「携帯・・・学校に忘れてきちゃった、かも?」


えへっと愛想笑いをすると、航平は吹き出して笑った。


「それじゃ、確かに気付かないよ」


そう言って笑いを収めると、航平はあたしの頭にポンと手を置く。


「ホント、心配したんだよ?」

「・・・・」


いつになく真面目な顔の航平。

焦ったあたしはプイっと横を向いた。


「航平は過保護過ぎるの!あたし、航平が思う程弱くないよ?」



この前、宮藤君に言われた事を思い出す。

確かに航平は、あたしに過保護過ぎる処がある。

習慣化しているから当たり前に思うけれど、本当は、登下校だっていつも一緒にする理由はない。