「崇君からは、たった一度‥‥手紙を貰ったわ」

「手紙?」


小さく頷いた母は、懐かしそうに目元を和ませて微笑んだ。



「『ひなこを生んでくれてありがとう。2人がいつまでも幸せでいられるように、僕は見守っていく』‥って」

「‥‥」

「まだ入院している時だったから驚いたわ」



その手紙が送られたのは、きっと‥あたしが崇さんと出会った頃。

おじさんから話を聞いた崇さんが、母宛てに出したんだと思う。


あの時。

あの後で‥‥

崇さんのあたしに対する態度は全然変わらない。

動揺する事もなく、いつも穏やかで優しくて‥‥

ユーリとあたしを同じように見守ってくれている。



その深く大きな愛情に、涙が出そうになった。



「ねぇ‥お母さん、やっぱり‥日記読んで?」

「‥え?」

「日記‥読んで欲しいな‥‥」


あたしはそう言って母に笑いかけた。



今更だけど

意味なんて無いかもしれないけど‥‥

せめて

母に、別れた後の崇さんを知って貰いたかった。