「今が読むべきタイミングだと思う」

「‥‥航平‥」


そう呟いたあたしは、航平が手にしている焦げ茶色の日記を見つめた。



「もう‥‥内容を怖がったりしないよね?」

「‥‥」

「一番知りたかった答えは、手に入れた」

「‥‥」

「でも‥どうして、おばさんが実の親子だって名乗ってくれなかったのか、ひなこを迎えに来るのが遅れたのか‥、分からない事があるでしょ?」

「‥‥うん」

「その答えは、もしかしたら‥この中にあるかもしれない」


航平はそう言って、あたしに日記を差し出した。



「‥‥」

「ひなこ」


なかなか手を伸ばさないあたしに、航平は苦笑する。


「大丈夫だよ、ひなこ」

「‥‥」

「ひなこが読んでる間、ずっと一緒に居るから」



眩しい航平の笑顔。


その笑顔に後押しされるように、あたしは日記に手を伸ばした。



「お願い‥‥航平も一緒に読んで」

「いいの?」


あたしは小さく頷くと、航平の横にぴったり寄り添った。

そんなあたしの肩を抱き寄せた航平は、その手をあたしの頭に回して優しく撫でる。



やっと見付けた

温かくて

優しくて

安心出来る場所


その中であたしはほっとため息を吐くと、ゆっくり日記を開いた。