「あ、起きた?」
航平があたしの顔を覗き込む。
「よく寝てたね」
「え‥そんなに寝てた‥?」
ぼぅとする頭を押さえてそう言うと、航平が小さく笑った。
「30分ぐらいかな?」
「‥‥30分‥?」
あたしは驚いて航平を見た。
車で30分なんて‥‥思ったより遠い。
一体何処に来たんだろう‥?
そう思いながら、あたしは窓の外に視線を送った。
「‥‥?」
タクシーはゆっくり住宅街を通り抜けて行く。
高級住宅地という感じじゃなくて、昔からある一軒家やアパートが隣接して立ち並ぶ。
入り組んだ迷路みたいな狭い道。
少し寂れた個人商店。
狭い児童公園。
「‥‥ここ‥」
小さく呟いたあたしは、それ以上、言葉を続ける事が出来なかった。
だって
だって‥この景色は‥‥
「‥‥嘘‥!!」
見覚えのある小学校の脇を通り過ぎた時。
全身の血が引いていった。
「着きましたよ」
運転手の声と共にタクシーが止まる。
止まった場所は、聞かなくても分かる。
そこは
最悪な思い出が詰まった処。
もう2度と来る事はないと思っていた場所だったから‥‥

