夢みたもの

「幼いあの子に、一生消えない傷を残した事。‥‥親としても、女としても、許せなかった」


「だから幸せになって欲しいの」そう付け加えた母は、崇さんに笑いかけた。


「崇君がひなこと現れた時‥‥凄く慌てたわ」

「慌てた‥?」


崇さんの言葉に、母はため息混じりに言葉を続けた。


「ひなこを取られる‥って」

「‥‥」

「まさか、崇君とあの子が出会ってるなんて思わなかったから‥‥。あの子が新しい家族を求めたら、間違いなく崇君がそれを与えるでしょう‥?」

「そう‥‥実はね‥」


笑いを堪えるように、崇さんは口元を手で隠して言った。


「実は、ひなこちゃんに言った事があるんだ。『ひなこちゃんが望むなら、新しい家族を作れる』って」

「‥えっ!?」


母の顔色が変わる。

崇さんは、そんな母の顔を見つめて小さく笑いながら手を振った。


「大丈夫。見事にフラれたから」

「‥‥」

「心配しなくても『幸せだから大丈夫です』って言われたよ」


崇さんの言葉に、母はため息を吐きながら膝の上に視線を落とした。


「それが、心からの言葉なら‥‥どんなに嬉しいかしら」

「恵さん‥」


「やっぱり詩織さんが笑ってるわ。『だからあの時言ったのに‥』って」


「後悔してる‥?」


いつになく、崇さんの声が緊張したような気がした。

そんな崇さんに、母は少し寂しげに笑いながら声を張り上げた。


「いいえ‥全然!私はあの子に会いたかったの。だから、後悔なんてしてない」

「‥‥」

「崇君は?‥‥崇君は、どう?」

「僕も同じだよ」

「そう‥良かった」


小さく呟くと、母は膝の上に置かれた崇さんの手を握り締めて笑った。


「じゃぁ、私達が守るべき子供達の為に‥力を尽くしましょう」