運動部の声に混じって、微かに聞こえてくる音。

それは、綺麗な旋律を奏でるピアノの音だった。


「へぇ・・・上手」


あたしは目を閉じて、微かに聞こえてくる音に耳を澄ませた。


母がピアノの講師をしているから、普段からピアノには馴染みがある。

音の良し悪しも多少分かるつもりだけれど、今演奏している生徒の腕は相当なものだ。



音の発生源は特別棟の2階。

音楽を専攻する特クラの生徒の為に、学校には音楽室の他、防音設備の整った個別の練習室がある。

普段、特クラの生徒は練習室を利用しているのだけど、今演奏している生徒は、練習室の空きが無かったのか音楽室を使用しているらしい。

だから、音が外まで漏れ出している。



特クラにこんな凄い弾き手が居るんだ。

そう思いながら音に聞き惚れていたあたしは、曲が変わった瞬間、ハッと目を開けた。