どうしたんだろう?

航平らしくない。


どうして

いつもみたいに笑ってくれないの‥‥?



「同乗しますか?」


救急隊員の問い掛けに頷くと、航平はあたしに歩み寄って手を握った。


「‥‥どうしたの?‥らしくないよ?」


「‥‥ごめん‥、ひなこ」


今にも倒れてしまうんじゃないかと思う程真っ青な顔をして、航平は辛そうにあたしを見た。



「‥‥俺じゃ‥ないんだ」


「‥え?」


「ひなこを助けたのは‥‥俺じゃない。守るって約束してたのに‥‥俺は、間に合わなかった」


意味が分からなくて、あたしは首を傾げる。



その時。


あたしより先に救急車に運び込まれるストレッチャーが視界に入った。


「‥‥!?」



目を疑った。


酸素マスクを付けて運び込まれていくその人。

カールした明るい茶色の髪。

マスク越しに見える、彫りの深い顔立ち。



「‥‥ユー‥リ‥‥?」



まさか。

そんな事‥‥ある筈ない。


だって‥

だってユーリは‥‥


頭が混乱する。


あの時。

目の前にトラックが迫っていた。

それなのに‥‥

どうして今、あたしはこうして意識があるの‥‥?


あの時。

あたしの名前を叫んだのは‥‥

あたしを助けてくれたのは‥‥


誰!?



「‥‥ぃや‥!!」

「ひなこ!?」


航平が強く手を握ってくれたけど‥‥

あたしは突き付けられた事実から目が離せなかった。


救急車に飛び乗る救急隊員の服が血で汚れてる。


「‥‥そんな‥」

「ひなこ」


「‥‥ぃやぁ‥!!」


そう叫んだのを最後に

あたしの意識は遠退いていった。